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ユーザー行動から改善点を発見!ユーザビリティテストの具体的な進め方

Tags: ユーザビリティテスト, UXリサーチ, デザイン改善, ユーザーテスト, 実践ガイド

デザインプロジェクトにおいて、ユーザーが実際にどのように製品やサービスを利用するのかを理解することは、優れたユーザー体験を設計するために不可欠です。しかし、ユーザーヒアリングだけでは捉えきれない、無意識の行動や潜在的な課題が存在します。そこで有効なのが「ユーザビリティテスト」です。

この手法は、UI/UXデザイナーがユーザーの行動を直接観察し、デザインの具体的な改善点を発見するための強力なツールとなります。この記事では、ユーザビリティテストの基本的な考え方から、準備、実施、そして結果の分析まで、体系的な進め方を解説します。

ユーザビリティテストとは

ユーザビリティテストとは、製品やサービスのユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)が、意図した通りに機能しているか、そしてユーザーがどれだけ簡単かつ効率的に目的を達成できるかを評価するための手法です。特定のユーザーに実際に製品やサービスを使ってもらい、その行動を観察することで、デザイン上の課題や改善点を発見します。

このテストの目的は、単に「使いやすいか」を尋ねるだけではありません。ユーザーが操作に迷ったり、エラーを起こしたりする具体的な「なぜ」を明らかにすることにあります。観察を通じて、ユーザーが直面する困難や不満の根本原因を特定し、それらを解決するための具体的なデザイン改善へと繋げることが目指されます。

なぜユーザビリティテストを行うのか

ユーザビリティテストは、デザインプロセスにおいて以下の点で重要な役割を果たします。

ユーザビリティテストの準備ステップ

効果的なユーザビリティテストを実施するためには、事前の周到な準備が不可欠です。以下のステップに沿って準備を進めます。

1. テスト目的の明確化

まず、このユーザビリティテストで何を明らかにしたいのか、具体的な目的を明確に設定します。例えば、「新規追加した登録フローがユーザーに理解されているかを確認する」「特定の機能の利用率が低い原因を特定する」といった具体的な問いを立てます。目的が明確であればあるほど、テストの設計や結果の分析がしやすくなります。

2. シナリオとタスクの設計

テスト目的を達成するために、被験者にどのような状況で何をしてもらいたいのかを具体的に記述した「シナリオ」と、達成してもらいたい「タスク」を設計します。

3. 被験者の選定

テストの目的に合致する適切な被験者を選定します。例えば、ターゲットユーザーが20代のビジネスパーソンであれば、それに近い属性の人物を選びます。被験者の人数は、初期の課題発見であれば5人程度でも多くの問題が見つかると言われています。人数が多すぎると分析コストが増大するため、目的とリソースに合わせて調整します。

4. テスト環境とツールの準備

テストを円滑に進めるための環境とツールを準備します。

ユーザビリティテストの実施ステップ

準備が整ったら、いよいよテストの実施です。以下の流れで進めます。

1. アイスブレイクと導入説明

被験者がリラックスできるよう、簡単なアイスブレイクから始めます。その後、テストの目的、進行方法、個人情報の取り扱いなどについて説明します。被験者には「これはあなたを評価するテストではなく、製品を改善するためのテストである」ことを明確に伝え、自由に発言してもらうよう促します。

2. タスクの実行と観察

被験者にシナリオを提示し、タスクを実行してもらいます。この際、「考えていることを声に出して話してもらう(思考発話法)」よう促すことが非常に有効です。モデレーターは被験者の発言や行動を注意深く観察し、記録します。

モデレーターは、被験者の思考を遮らず、安易にヒントを与えないよう注意が必要です。質問をする際は、誘導的にならないようオープンな質問(例:「今、何を考えていますか?」)を心がけます。

3. 振り返り・質疑応答

すべてのタスクが終了したら、被験者にテスト全体の感想や、特に印象に残った点、難しかった点などを自由に話してもらいます。モデレーターは、観察中に気づいた点や疑問に感じた点について、さらに詳しく質問します。

結果の分析とデザインへの反映

テストが終了したら、収集したデータを分析し、デザイン改善へと繋げます。

1. データ収集と整理

記録した動画、音声、メモなどすべてのデータを集約し、整理します。タスクごとの成功・失敗、発生した問題点、ユーザーの発言などを体系的にまとめます。

2. 課題の特定と優先順位付け

集約されたデータから、具体的なユーザビリティ上の課題を特定します。例えば、「登録フォームの項目が多すぎて、入力途中で離脱する」「特定機能への導線が分かりにくい」といった形で問題をリストアップします。

次に、発見された課題がユーザーに与える影響度(深刻度)と、発生頻度を評価し、優先順位をつけます。緊急度が高く、多くのユーザーに影響を与える問題から優先的に解決を検討します。

3. デザインへの反映と検証

特定された課題と優先順位に基づき、具体的なデザイン改善案を立案します。改善案が複数考えられる場合は、A/Bテストなどで効果を検証することも有効です。改善策を実施した後も、再度ユーザビリティテストを行うなどして、その効果を検証し続けることが重要です。

まとめ

ユーザビリティテストは、ユーザーの「生の声」と「実際の行動」から、製品やサービスの具体的な課題を明らかにし、より良いデザインへと導くための強力な手法です。準備段階での目的設定から、シナリオ設計、適切な被験者選定、そして実施中の丁寧な観察、さらには結果の客観的な分析とデザインへの反映まで、一連のプロセスを体系的に進めることが成功の鍵となります。

デザインリサーチの第一歩として、ぜひユーザビリティテストに取り組んでみてください。ユーザー視点に立った改善を繰り返すことで、製品の品質は格段に向上し、ユーザーに真に価値ある体験を提供できるようになるでしょう。